2011年5月24日火曜日

被災地を巡って

半田です。 4月27日から5月1日までの期間、東北地方の被災地を廻ってきました。中越地震で被害を受けた十日町市のミティラー美術館の長谷川時夫館長と2人で、福島県南相馬市から宮城県内を経て岩手県の久慈市まで、約2,000kmを車で移動しました。最初の入口を南相馬をとしたのは、津波とともに原発事故による被害に対して、何らか実感できる感覚を持ちたいと思ったからです。実際、原発事故は、目に見えない放射能の影響から生じる、周辺住民の生活破壊を伴う深刻な問題であることを、人影まばらな南相馬の空気の中で実感しました。
予想はしていたものの、津波の被害は想像をはるかに超え、現地で受けた衝撃は思いの外に大きく、戻ってから出来るだけ早く、現地の状況をこのサイトでもご報告するつもりだったのですが、なかなか気持ちが前に向かず、時間だけが経ってしまいました。これから、少しずつ気持ちを整理して、情報を発信していきたいと思います。

今回は、できるだけ津波被害を受けた太平洋岸の地域を北上し、可能な限り多くの博物館施設を訪ね、地震や津波の被害の状況を実見したいと考えました。今回訪れた津波被害を受けた太平洋岸の地域は、福島県南相馬市、宮城県名取市・多賀城市・七ヶ浜町・塩竈市・石巻市・女川町・南三陸町・気仙沼市、岩手県陸前高田市、大船渡町、釜石市、大槌町、山田町、宮古市、久慈市です。また、宿泊地を探して訪れた内陸部の地域(津波被害を受けていない地域)は、福島県伊達市、宮城県仙台市、宮城県栗原市・登米市、岩手県遠野市・花巻市大迫などです。
この行程のなかで、全体で20数館の博物館等の施設を訪れました。連休とも重なり、館の職員が居られない施設も多くありましたが、概ね、被災地域の地域的傾向は掴むことができたと考えています。
  1. 地震、津波、原発事故という3大要因による被害を被った地域が、かつて例のない広範な地域に及んでいる。
  2. 地震被害は、同じ震度を記録した地域の中でも、施設によって被害の大小にかなりの違いがある。
  3. 今回ほどの甚大な津波被害はかつて例がなく、博物館施設等の復興にも新たな長期的取組みが必要である。
  4. 被災地で施設の復興に向けて仕事をしている方々の多くが、自らも被災者であることをキチッと理解する必要がある。
  5. 原発事故の影響を受ける地域にある博物館施設の復興は、事故が収束してから本格的に始めざるを得ない。
  6. 未だ多くの行方不明者がいて、避難所での暮しを余儀なくされている方が多くいる状況で、博物館等、文化施設の復興が本格化するのは難しい。
  7. 被害資料を対象とする「文化財レスキュー」事業や施設の復旧事業とは別に、被災した施設が果たせないでいる博物館としての役割(地域住民へのサービス、社会教育機能など)を、被災地以外の博物館の連携で、移動博物館やハンズオンプログラムの巡回等、多様な視点での支援が求められる。
正直、津波の直撃を受けた施設を目の当たりにすると、言葉を失いましたが、街並全体が消失したような地域で、施設の復興に汗を流す学芸員の方々や、瓦礫のなかを通学する子どもたちの姿に、外から訪れた私が、逆に強く励まされる結果となりました。

引き続き、できるだけ情報を発信していきたいと思います。
(たばこと塩の博物館 半田)

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